晩夏 (上)
雷雨を避けようと立ち寄った山麓の「薔薇の家」。旅の青年はそこで驚くほど教養豊かな謎の老主人に出会う。ニーチェ絶賛。
【解説: 小名木榮三郎 】
遠く緑の葉陰に教会の塔が見える。めざすロールベルクの村までは、あともう少し―だが、先ほどから急速に黒い雲が拡がり始め、今にも雷雨の来そうな空模様になった。旅の青年は、街道を離れ、雨宿りを求めて、丘の上の屋敷へ続く道を登り始める。青年の運命は、この時から、大きく変わって行くのも知らずに…。オーストリア・アルプス山麓に美しく建つ「薔薇の家」を舞台に、物語は、ゆっくりと、急ぐことなく、静かに進んで行く。やがて押し寄せてくる激しく深い感動…。トーマス・マンが「世界文学のなかでも最も奥深く、最も内密な大胆さを持ち、最も不思議な感動をあたえる―」と評した作家の最高傑作。
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