昭和史の決定的瞬間
日中戦争は軍国主義の後ではなく、改革の途中で始まった。生活改善の要求は、なぜ反戦の意思と結びつかなかったのか。日本の運命を変えた二年間の真相を追う。
民政党議員だった斎藤隆夫の「粛軍演説」は、軍部批判・戦争批判の演説として有名である。つまり、輸出依存の資本家を支持層に持つ民政党は、一貫して平和を重視していたが、本来は平和勢力であるべき労働者の社会改良の要求には冷淡だった。その結果、「戦争か平和か」という争点は「市場原理派か福祉重視か」という対立と交錯しながら、昭和11・12年の分岐点になだれ込んでいく。従来の通説である「一五年戦争史観」を越えて、「戦前」を新たな視点から見直す。
プロローグ―「昭和」の二つの危機
第1章 反乱は総選挙の直後に起こった(前史としてのエリートの二極分裂
総選挙と二・二六事件)
第2章 陸軍も大きな抵抗にあっていた(特別議会での攻防
「保守党」と「急進党」の「人民戦線」)
第3章 平和重視の内閣は「流産」した(広田弘毅内閣の退陣(昭和一二年一月)
宇垣一成の組閣失敗 ほか)
第4章 対立を深める軍拡と生活改善(「狭義国防論」の登場
「広義国防論」の反撃)
第5章 戦争は民主勢力の躍進の中で起こった(「民主主義」と「戦争」
「戦争」と「民主主義」 ほか)
エピローグ―後世の常識と歴史の真実
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