モードの迷宮
拘束したり、隠蔽したり……。衣服、そしてそれを身にまとう「わたし」とは何なのか。スリリングに語られる現象学的な身体論。
【解説: 植島啓司 】
たとえば、このドレスはわたしの身体を覆っているのだろうか。逆に晒しているとはいえないだろうか。たとえば、衣服は何をひたすら隠しているのだろうか。いやむしろ、何もないからこそ、あれほど飾りたてているのではないだろうか。ファッションは、自ら創出すると同時に裏切り、設定すると同時に瓦解させ、たえずおのれを超えてゆこうとする運動体である。そんなファッションを相反する動性に引き裂かれた状態、つまりディスプロポーションとしてとらえること、そしてそれを通じて、“わたし”の存在がまさにそれであるような、根源的ディスプロポーションのなかに分け入ってゆくこと、それが問題だ。サントリー学芸賞受賞作。
1 拘束の逆説(意識の皮膚
従順な身体
シンデレラの夢
誘惑の糸口
騒がしい境界)
2 隠蔽の照準(泡だつ表面
“肉”の回避
最後のヴェール
イマジネールな外縁
同一性の遊び)
3 変形の規則(饒舌な可視性
身体のシミュレーション
“わたし”のもろさ
無秩序に変えられるための秩序
明るいニヒリズム?)
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