否定的なもののもとへの滞留 ─カント、ヘーゲル、イデオロギー批判
ラカンの精神分析手法でポストモダン的状況を批評してきた著者が、この大部なる主著でドイツ観念論に対峙し、否定性を生き抜く道を提示する。
ソ連・東欧社会主義解体ののち、ナショナリズムの暴走や民族紛争が多発する今日のポストモダン的状況の中で、「主体」は空疎化の一途をたどっている。この袋小路は、打破できるのか?「できる。哲学によって」というのが著者ジジェクの主張である。ラカンの精神分析理論を駆使し、映画やオペラを援用しつつ、カントからヘーゲルまでドイツ観念論に対峙することで、主体の「空虚」を生き抜く道筋を提示する。時代を逆撫でする「スロヴェニアの知の巨人」が、「否定的なもののもとに滞留すること」(ヘーゲル)を引き受けることに現代人の生存可能性を見出す渾身の大著。
第1部 コギト―主体と呼ばれる空虚(「考える私あるいは彼あるいはそれ(「モノ」)」
コギトと性的差異)
第2部 ゆえに―弁証法的誤謬推理(根源的「悪」と関連する事柄
イデオロギーの理論としてのヘーゲルの「本質の論理」)
第3部 われあり―享楽のループ(「おまえを傷つけたその槍だけが、その傷を癒すことができる」
汝のネーションを汝自身として享楽せよ!)
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