スタンツェ
見えない表象の変遷をたどる
西洋文化の豊饒なイメージの宝庫を自在に横切り、愛・言葉そして喪失の想像力が表象に与えた役割をたどる。21世紀を牽引する哲学者の博覧強記。
たとえば「メランコリー」。フロイトやラカンら近代の精神分析学により「対象」と「所有」の病理とされ研究対象となったこの病は、中世の修道士の無気力に発し、「狂気」「欲望」「並外れた詩人」という極端な矛盾を孕む黒胆汁の気質と考えられ、デューラーの作品に結晶する。中世の物語や恋愛詩、エンブレムや玩具、ダンディズムや精神分析、それらは言葉とイメージがつむぎ出した想像と忘却の変遷の保管庫=「スタンツェ」である。西洋文明における豊饒なイメージの宝庫を自在に横切り、欲望・感情・言葉のみならず欠乏・喪失が表象に与えてきた役割をたどる。21世紀を牽引する哲学者の博覧強記。
第1章 エロスの表象像(白昼のダイモン
メランコリア
メランコリックなエロス
失われた対象
エロスの表象像)
第2章 オドラデクの世界で―商品を前にした芸術作品(フロイト、あるいは不在の対象
マルクス、あるいは万国博覧会
ボードレール、あるいは絶対商品
洒落男ブランメル、あるいは非現実性の出現
マダム・パンクーク、あるいは玩具の妖精)
第3章 言葉と表象像―一三世紀の恋愛詩における表象像の理論(ナルキッソスとピュグマリオン
鏡の前のエロス
「想像の精気」
愛の精気たち
ナルキッソスとピュグマリオンの間
「終わりなき悦び」)
第4章 倒錯したイメージ―スフィンクスの観点から見た記号論(オイディプスとスフィンクス
固有のものと固有でないもの
壁と襞)
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