かたり
馥郁たることばの世界へ
物語は文学だけでなく、哲学、言語学、科学的理論にもある。あらゆる学問を貫く「物語」についての領域横断的論考。
【解説: 野家啓一 】
「歴史学は客観主義、実証主義の過度の呪縛から逃れ、小説の手法を用いながら、具体的な効果を現さなければならない」。この折口信夫の論を受け著者は、虚構―実録の双方根底に“かたり”という共通の基盤を見出した。歴史を伝える上で「(過去を)はなす」のか「かたる」のか、それら馴染み深い言葉の用法を比較しながら、物語を提示する「言語」の位相を考察。その帰結で科学の理論と、物語・詩との間に著しい類似点があることが披露される。カント研究第一人者でありながら、哲学の枠を超え、和洋の垣根なく、領域横断的な発想をもつ著者ならではの縦横無尽な論究。
第1章 “かたり”の基底(詩と歴史
人文科学としての“かたり”
〈かたり〉の回路)
第2章 “かたり”の位相(言語行為としての“かたり”
“かたり”と“はなし”
垂直の言語行為・水平の言語行為
〈かたり〉と〈ふり〉
〈かたり〉の位相)
第3章 “かたり”の時間―いまはむかし(“むかし”と“いにしへ”
“かたり”の時制―H.ヴァインリヒに即して
浮き彫り付与とアオリスト
発話の方向
時制の移行・時制の転移)
第4章 “かたり”と“うた”と人称と(ヤーコブソンの二軸理論
言語の詩的機能と人称の転移
時間の詩的転移としての〈かたり〉)
第5章 “かたり”と世界―time immemorial(時間とのたわむれ・時間の可逆性
詩と科学そしてアオリスト)
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