むかし卓袱台があったころ
久世ワールド、秘密の鍵
家族たちのお互いへの思い、近隣の人たちとの連帯はどこへ行ってしまったのか。あのころは確かにあったものの行方を探す心の旅。
【解説: 筒井ともみ 】
虎 北村薫
かつての人気テレビドラマ「時間ですよ」「寺内貫太郎一家」では、卓袱台がもうひとつの主人公だ。食事どきや、団欒に卓袱台を囲み、ワイワイ、ガヤガヤ話し合った。卓袱台は、家族の歴史を知り尽くしている。あのころ確かにあった、家族たちのお互いへの思いや、近隣の人たちとの連帯は、いったいどこへ行ってしまったのか。大切なものの行方を探し、遠い日の記憶の中に佇む。敬愛する山本夏彦氏に依頼され「室内」に連載した随筆からは、真摯で繊細で照れ性な作家の姿が垣間見える。
1(願わくば畳の上で
むかし電話がなかったころ
私はいったい誰でしょう ほか)
2(幻景二題
大礼服を着てみた話
ある秋の一日… ほか)
3(地図の話
日記を書いた日
瓶の中の悦楽 ほか)
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